EXIT 〜剣を持つ魔法使い 外伝〜

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 魔法使いがコバルトブルーの眸を向けた先で、ランプが音をたてて弾け、炎が床に這い出した。そして、俺が一瞬それに気を取られた隙に、もう彼の姿は消え失せていた。  助かった------ ! どっと汗が噴き出した。逃げなければ !  俺は、抜けた腰を引きずってドアに這い寄って行った。ああ、鍵が掛かっていたんだった !!  鍵はレイヤが持っているはずだった。俺は彼の亡骸をひっくり返し、懸命に鍵を探った。炎はいよいよ狂喜して、すでに天井を舐めはじめている。あんなちいさなランプの火が、なぜこんなに勢いがつよいのか。  二つの屍体------レイヤの手にかかった幾体とも知れぬ犠牲者の残骸もあるかも知れない------もろとも、じきにこの館は燃え落ちてしまうだろう。そうなる前に、なんとしても……  気がつくと、俺は命綱の鍵を探す手を止めて、レイヤの死に顔に見入っていた。こんな穏やかな、安らかな顔をして……もはや罪の重さに苦悩することもなく、殺戮への欲求を神に言い訳する必要もなく、こんなに美しい、癒された顔をして------。  いや、俺は逃げるのだ。こんな縁起の悪い場所も出来事もきれいさっぱり忘れて、暮らしも環境もどん底だが住み慣れた街で面白おかしく、いつか、き                          “EXIT”
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