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時間まで、車の中で待つことにした。
四時間もカフェやファミレスで時間を潰せないし、そんな気分にもなれない。
莉乃のことは智哉が気にしてくれているので、中途半端に家に帰らなくても良い。
車を停めたパーキングの地下に向かい、トボトボと階段を降りている時だった。
あと少しで地下入口、というところで 男女が言い争う声が響き出した。
思わず足を止め、このまま進んでも大丈夫かと様子を窺う。
「もういいんじゃないのかって言ってるんだ!」
「卑怯者!あんた、最低ね!」
……痴話喧嘩か。
わざわざ こんな場所で話さなくてもいいのに。
とにかく彼らとは目を合わさず、横を素通りすれば…
「泰輝があんなに必死になって止めに来たんだぞ?その顔を見たら…」
「居場所がバレるとか、あんたのガードが甘過ぎるのよ!しかも泰輝、あの女に打ち明けたですって?冗談じゃない、また計画を練り直さなきゃいけないでしょ!」
「どんな計画を立てても、きっと全部受け止めようとするはず……そういう女性なんだ、彼女は」
「ふん、思った通りね」
「何が」
「あんたが、あの女に本気だってこと!だから あの女の前から黙って消えた、そうなんでしょ!」
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