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「…それに、本日 神尾は授業が最終時間までございます。今からですと、かなりお待ちいただくことになりますが」
「もちろん待たせていただきますし、話も短時間で済ませます。ですから」
「承知しました。神尾には伝えておきますので」
よほど面倒なのか 女性は私の言葉を遮り、もうこれ以上話はないとばかりに軽く会釈をする。
「ありがとうございます。一旦外して、時間がきたら戻ってきます」
私も頭を下げ、居心地が悪くなってきた塾をそそくさと後にした。
授業が終わるまで あと四時間。
ーーとにかく、彼に会える。
私に与えてくれた 安らぎやときめきや熱情は消えて、軽蔑と憎しみと無情だけがあったとしても、それを受け入れる覚悟は出来ている。
もちろん許されるなんて有り得ないけれど、神尾さんと紗栄子さんに歩ませてしまった人生の戦慄を、私なりに精一杯謝罪しなければ。
そして、貴方の復讐に どうか子どもたちは巻き込まないで欲しいと懇願して。
それから
この先、どんなことが起きても
貴方には感謝していると…
計画的に私に近づき 男女の関係になったことも
決して後悔していないと…
涙なんかで誤魔化さず、しっかりと伝えなければならない。
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