真実

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頭の中が真っ白になって 激しい胸の鼓動が全身を包み、自分の意思とは無関係に 二人の争いが耳に流れてくる。 「莉乃ちゃんは泰輝を想って手首を切り、結婚を無理強いした柳原の理事長は病に倒れた。椎葉だってかなり弱ってるんだろ?もう いいんじゃないのか?」 「話をすり替えるつもりね。あの女があんたの奴隷になるまで、徹底的に洗脳するんじゃなかったの?そういう意味じゃ、泰輝の方が役に立ったじゃない」 「泰輝と莉乃ちゃんは、お互い本気だったんだ!そんな言い方するな!」 「何 興奮してんのよ。兄弟揃って 騙そうとした女に本気になるなんて、ホント情けない話」 「この計画に泰輝は関係ない。椎葉の子どもたちもだ。いいか、三人には手を出さないと約束しろ」 「おー、怖っ!でも、これだけは言っておくわ。あいつらをもっと苦しめなきゃ、光弘(みつひろ)さんは浮かばれないのよ。それを忘れたなんて言わせないから!」 「お前と地獄に落ちる覚悟は出来ている。紗栄子、もう一度言う…三人には手を出すな」 「あんたが、これからどこまでやるか。それ次第ねぇ」 男女の姿は見えなくても、私は金縛りにあったように その場から動けなくなった。
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