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第17話 やっと決まる
その日のちりこは疲れてはいたがとても上機嫌だった。
「やったあ!」
やっと小さな文房具屋さんのレジのパートが受かった。
本当に嬉しい。
ずっと焦ってた。
季節は巡って10月になっていた。
まだほんのり暑い日もあったが今朝は少し肌寒かった。
街の木々の葉っぱが色づいてきて落ち葉も目立ってきていた。
どこからか金木犀の香りがしている。
ちりこは内職をやったりしながらどうにかこうにか生活していた。
慶一郎から何度も頼みこまれてついに離婚した。
私はとにかくもう色々限界だったし何より暮らしていくために必死だった。
慰謝料の100万円はなるべく手をつけないようにとか思っていたのに、長男の小学校のランドセル買ったりだとか二人の幼稚園の遠足代とかなんだかんだと毎月かかった。
生きるってこんなに大変だったかな。
周りには若いとは言われる30代前半だが、20代とは明らかに違う条件の厳しさを感じる。年を取れば取るほど生きづらい。
あれから勝也先生には会っていない。
アパートの前に引っ越し屋さんのトラックを見たことがあった。
引っ越したのかなと少し寂しく思ったけれど、ちりこはそんな風に思う権利はないと軽く首を振った。
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