16.金春色の、お日柄に

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 父と母、そして航。宮本の義母に義兄。そして倉重の叔母に、従姉妹達、その家族。ごく僅かの近しい親族だけのテーブルには、ここの料理長がこの度のお披露目式のためにつくってくれた婚礼コース料理が運ばれてくる。  父もご機嫌で、母は宮本の義母と手と手を取り合ってなにを話しているのか……、母親二人で涙をこぼしているのを花南は見てしまう。  航は若い従兄妹同士で、楽しそうにしている。  テーブルの中心には、カナが先日仕上げたばかりの『白いマグノリア』。白いキャンドルの炎が優しく揺れて咲いている。  白いパーティールームには、潮騒。青い光がこぼれている。  久しぶりに集まった親族で賑わう小さなパーティールーム。カナはそっとテラスに出てみる。  この部屋は、気心知れた知り合い同士がささやかに会食をするためにある部屋で、テラスからは砂浜に降りていく階段もある。その階段をカナは振袖姿でゆっくりと降りた。  白い砂、この部屋のための渚。今日は振袖姿で波打ち際まで行くことは出来ない。それでもカナはそこでひとり、アクアマリンの海を見つめる。遠浅で穏やかなプライベートビーチ。いつか造った金春の大杯を思い出す。
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