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1.月と花の姉妹
死別した妻は隙がなく、義妹には隙があった。
姉妹は似てなどいなかった。でも、顔つきが似ていた。なのに全く似ていない。
わかりやすく喩えると、妻は白い服が似合い、妹は黒い服が似合う。それぐらいに持っているムードが相反していた。
妻は胸元に気遣い完璧に隠すなら、妹は無意識にそこを匂わせていた。
だからといって、妹の花南が男に媚びてしている訳でもなく、彼女がその服を着ると、胸元が開いていなくてもそこに色香を匂わせている。
妻は常に微笑みを湛え、妹は常に澄ましている。
姉の『美月』は、月ではなく花のように華やかで。妹の『花南』は、陽気な花ではなく月のように静かだった。
だが、実際のところ。名は体を表す――は、姉妹に当てはまっていた。
姉の仮面は花で、本当は月の妖。完璧な姿をした人形のよう。本性わからぬ、遠い光。
妹は匂う花なのに、ひっそりと夜の片隅で咲く控えめの……。でも奥底に触れると、肌を熱くする。
『生きている』。そんな熱を感じさせてくれたのは、妹だった。
二年留守にしていた義妹が、この夏、西の京に帰ってきた。
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