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プロローグ
太陽は完全に沈み、淡い橙色の余韻がわずかに残る。
次の瞬間、けたたましい鐘の音が鳴り響いた。
――リーンゴーン、リーンゴーン。
商店街の一番奥から、順々に明かりが灯っていく。店舗ごとに過剰な電飾が施されているせいで、季節外れのクリスマスみたいだ。
鐘の音が終わったかと思ったら、今度は続けざまにパレードのような音楽が流れてくる。
一体何処に隠れていたのか、アーケード内にも人が溢れ始めた。
通りに面したテラス席で談笑を始める老夫婦や、手を繋いで歩くカップル。走り回る子供を、追いかけて叱る母親。
どこにでもある日常の光景にこそ混じる確かな違和感に、私はごくりと息を呑んだ。
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