176人が本棚に入れています
本棚に追加
/223ページ
傷だらけのラブ
かけ布団から出てる右手は
手首まで包帯が見えて
私の好きな手にも
小さいけれど擦り傷がいくつもあった。
……どれだけ痛い思いをしたの……?
高速道路の事故は後が怖いって言うけれど
あなたはいつもそんな危ない事と
背中合わせでいるんだね。
思わず擦り傷だらけの右手に
そっと自分の両手を重ねた。
──あったかい。
生きてる証拠の温かさ。
少し手を握ってみたら
ゆっくりと山下さんの目が開き
その目が私へと向けられた。
「……山下さん……」
「……なんで……?
え……? ……夢なんか……? 」
首を横に振って
「………夢じゃないよ」
私はまた山下さんの手を握りしめた。
最初のコメントを投稿しよう!