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「アイリーシャ様なら、縁談はよりどりみどりでしょうね。お年頃になるのが楽しみだわ。私の親戚にちょうどいい年回りの子がいますから、ぜひ」
でも――とちらり、と母の顔を見上げてみる。
前世の母は、こういった時すぐに愛美の売り込みにかかっていた。でも、今回の人生の母は違う。
「娘には、幸せになってもらえればそれでいいの。家のために結婚だなんて、古い概念だわ」
「公爵夫人のところは、熱烈に愛し合っての結婚ですものね」
そうか、両親は恋愛結婚だったのか。
昨日までの"アイリーシャ"としての記憶もしっかり残っているけれど、両親が恋愛結婚だったなんてことは知らなかった。子供に聞かせるような話でもないし。
(……でも)
娘には、幸せになってもらえればそれでいい。母の言葉がすとんと胸に落ちる。
――ひょっとしたら。
今回の人生では、前世とは違う家族になれるのかもしれない。
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