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二人
タクシーに乗り込みロイと肩を並べて、自宅マンションへと向かいながら俺は生命の不思議について考えていた。
ロイの二十歳の誕生日の夜――二人が初めて一つになり、お互いの気持ちを確かめ合ったあの夜。
あの夜を境に二人の病気の進行は止まった。
完治したわけでは勿論ない。
でも、病状が悪くなることもない。
小康状態が続いているのだ。
はっきり言ってこれは奇跡と言ってもいい。
隣で屈託なく笑う愛する人を見て、思う。
ロイは俺の病気のことを知らないし、話すつもりもない。
だって君にはいつも笑っていて欲しいから。
いつまでこの平穏で幸せな状況が続くのかは分からない。
不安がないと言えばそれは嘘になってしまうけれども。
今、この瞬間、君が隣で笑ってくれている。
それが何よりも幸せだから。
俺もまた心からの笑顔を取り戻すことができた。
ありがとう……。
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