【6】

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「なるほど。パソコンを覗き込む顔が近かった、と」 「そこだけピックアップしないでください。その後の奇声の方が面白かったんですから」 「フフフ……。落ち着いている百瀬くんだから、ちょっとしたミスとかあるとざまあみろ感がでるわよね」 「そんな……」 「人の不幸は蜜の味ってね」  畳一畳ほどの狭い給湯室である。大滝さんはカップ一個洗うのに、スポンジに思いっきり洗剤を出して、もこもこと泡を立て始めた。この事務所は洗剤の減りが早そうだ。  私はふと思ったことを口に出した。 「あの眼鏡、度が合ってないんですかね?」  吊り上がったデザインのハーフリム。三白眼をパワーアップさせるそれ。 「あはは。どうかしらね」 「百瀬さんを思い出してみると、ディスプレイにも書類にも目が近い気がするんですよね」  立っているときはそんなことはないのに、座っているときは折角の長身がいつも丸まっている気がする。長身の人にありがちな猫背。勿体ない。 「流石に百瀬さんの眼鏡事情は分からないけれど、あの眼鏡以外を掛けているのは見たことないわね。この営業所に異動してきたときからずっとあれよ」  大量の泡をこれまた大量の水で洗い流しながら言う。シンクを叩く水の音が煩い。
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