商人とドラゴンハンター

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笛の音に呼ばれてやって来た中型竜は、レオルの愛刀によって一太刀で真っ二つに叩き斬られた。 事切れた竜は浮力を失い、真っ逆さまに落ちていく。 フランの世界でドラゴンは、攻撃はおろか同じ空を飛ぶことすら禁じられ、信仰の対象とする国もあるほど畏怖された存在なのに。 「そちらの世界でドラゴン討伐とは、こんなにも簡単なものなんですか?」 「普通は隊を組んで追い込んでから討伐、って感じだな」 つまりは、それだけレオルが強いという事だ。 その桁外れの強さは、彼が本当に異世界者なのだとフランに思い知らせた。 地上に降りると、レオルは躊躇うことなくドラゴンの巨体をサクサクと切り分ける。 「ドラゴンは一つも捨てる部分が無いエコな生き物だ。皮は最強の防具に。骨は頑強な武器に。血は回復薬に使え、心臓は長命の秘薬になる。肉は言わずもがな、煮て良し、焼いて良し、揚げて良しだ」 一つ一つ言いながら、部位ごと魔法でコーティングをしてバッグに詰め込んでいく。 小さなバッグだが詰めても詰めても、まだ入る。 明らかに容量がおかしな事になっているが、フランはもう何も言うまいと決めた。 「よし、フラン。ここからが本番だ。その目で真贋(しんがん)改めてくれ」 レオルはドラゴンの腹に腕を突っ込むと、すぐに血塗れの何かを取り出した。 「浄化」 現れたのは、透き通った薄い水色。 懐かしい 見た瞬間その言葉がよぎり、フラン自身驚いた。 「どうだ?」 「……美しいです、とても。」 記憶の霧が晴れ、目の前の物と一致する。 「間違いありません。これがドラゴンドロップです」 道理で、幻。 本来ドラゴンの寿命は途方もなく長い。 ドラゴンの体内にあるものなど探しようがないのだ。
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