プロローグ・絶滅の兆候

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 そしてソングは母を亡くした十歳の時に、見知らぬ老人にアーズランド島に連れて行かれて妖精の指導者に預けられた。  それから五年が過ぎ、ソングは神族の移民エミー族と妖精と共に平穏に暮らしていたが、精霊界の『クラウド』と呼ばれる瑪瑙(めのう)の台座に黒い血脈のひび割れが走り、妖精の族長チャチルから不吉な予兆が告げられた。 『遂にこのアーズランド島にも魔の黒い手が伸び、精霊の地に呪いの黒い毒を振り撒かれた。生命の地底から湧き出るウルズの泉が(けが)されてしまったのだ』  ソングは母が語ったように、この異世界は海の水壁(すいへき)に守られ、異国への通り道は地底へと続くユグドラシルの迷路しかなく、ウルズの泉の最終ゲートは地竜に守られた難攻不落の国だと思っていた。  しかしクラウドの台座が危機を予言をしたように、王サーディンが局部から炭黒く腐り死んでしまったのである。
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