トロロと鍵

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トロロと鍵

登場人物 自然薯トロロ:トロロの妖精 ポリ代:ポリ袋の妖精 逢引安男:合い挽き肉の妖精 パン子:パン粉の妖精 クリクリ:ブンブン五月蠅いハチの妖精 台所でから揚げを揚げているポリ代。そんな事して大丈夫ですか?ポリ代さん。 だがしかし、愛の力は偉大だなと。安男の好物を作る為なら我が身を投げ出してでもけんめいに家事に励む。 昨今の女子には見習ってほしいなどと言えば非難轟轟、ゴーゴーはいくらなんでも古すぎるなとトロロは思う。ロングヘア―をなびかせ、タータンチェックのミニスカ身に着けて、腰をくねらせて踊っていた念子を見たことは?あれ、そう言えば自分はそんな場所に行った事がなかったな、冥途の土産に一度は足を踏み入れてみようかな?とから揚げの匂いに様々な欲望が湧く。 ツバも湧く。偶然に近所の見切り品専門のスーパーで立ち話。 念子の奴が、新聞屋と出掛けちゃったもんで、今日は弁当でも買って帰るんですよ。 と話したら、 じゃあ、家に来てから揚げでも食べて行って下さいって、 こんなわたしにまで何処まで優しいんだ、ポリ代さ~ん。 何処かの誰かさんと違って、お肌も透き通るように白いじゃないか!! イヤ~ン、怖い~、パチパチしてる~って、フライパンの蓋で応戦しながらヒラヒラしちゃって、そそるね~。 わたし、長年鍛えた肉体労働で心身の力は有り余っているし、不気味な力を持つ不思議ちゃん分類だからねぇ。 いざとなれば、火なんかには負けやしない。ドロドロ~ネバ~と張り付いて一発消火!!できるか?消化なら自信あるけどと独り粘っこく笑って見ている。 そこに何処をほっつき歩いていたのか安男が帰ってくる。 今日の昼下がりにあの水に流されたパン子のご機嫌を取って、俺の愛情を受け止めてくれるのは君だけじゃないか…なんて、調子のよい事を我が庭園にあるヒビが入ったプラスチックボウル型ピンク遊戯の中でヒソヒソ、 それ、覗いてたんだからねぇと、言いたくなるトロロ。 突然にお邪魔していますと、ネチネチした心の声を飲み込んで言う。 能天気な安男はチワッス!!と、疲労とも退屈とも無縁ですぅ~と言った感じで言う。 それがまたそれしかなかった自分を見下されたようで、ドロドロが腹に溜まる。安男はポリ代の肩などを抱き、できたてのから揚げをつまみ食い。 どんどん減っている。アラ~ン、駄目じゃないの~、トロロさんの分が無くなっちゃうわ~と、あまり厳しくも言わず、この許されざる行為をほぼ黙認しているポリ代。 トロロは見かねて、そう言えば、今日の昼頃、パン子さんに似た人を我が庭園でお見かけしたなあ~と、軽くジャブ!! 安男は顔色一つ変えるでもなく、彼女もねえ、最近、お家で必要とされていないとか、あるみたいで話を聞いちゃったんですよ。 と事もなげ。 ポリ代は俯いて寂しそうにその話を聞きながら揚げ物を続けている。ヒラヒラが止まらない。トロロは一番泣きたいのはポリ代さんであって、その彼女が堪えているのに自分はなんと大人げなかったのだろうと自分が悲しくなる。 しかし食後ベランダに出てスーパームーン、奇麗ねと言うポリ代に対して君の心の方がずっと控えめで美しいよ、と、ほざく安男にむかっ腹。こそっと近づき、手に触り、痒くなれと、念じるトロロ。 その念は宇宙世界を旅して宇宙樹にタッチし戻ってきて、残念なことにクリクリ記者に届いてしまう。突然、痒ッ、となったクリクリ記者は今年が暖かいから蚊にでも喰われたか?と思った。
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