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中学生として参加する、最後のコンクールの全国大会。
控え室で、アキラは一人瞑想を試みていた。
(だめだ。このままだと、入賞すら危ういかもしれない)
あの電話のあとから、宙ぶらりんの精神状態が続いていた。
なんのためにコンクールに出ているのか?
どうしてピアノを弾いているのか?
(ボクは、なんのために……)
「アキラくん……?」
アキラの思考を打ち破ったのは、少し震えた声だった。
目を開くと、紺色のドレスに身を包んだ同い年くらいの女の子が立っていた。
「アキラくんだよね……? 私のこと、わかる?」
「……道歌ちゃん?」
目の前に立っていたのは、3年前まで連弾のパートナーとして音楽を共にした藤友道歌、その人だった。
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