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星降りの予想時刻は18時だ。
夏よりだいぶ短くなった日は17時には赤く落ちかけ、30分もすると空は群青になった。そして雨戸の隙間からの光は絶たれた。
”ちゃんと戸締りできたわね”
母親からLINEが来る。
”大丈夫。雨戸全部閉めた。今からご飯”
そう返す。味噌汁は母親が作り置いてくれていた。ご飯も炊けている。野菜炒めだけ自分で作るように言われている。
フライパンに油をしき、少し迷ってニンニクを入れるのはやめた。
今夜は、両親のいない初めての星降りだ。
ずっと昔のことだけど今でも鮮明に思い出せる光景がある。
小さな頃一度だけ、私は星降りを直接見たことがある。
それは、正確に言葉にはできないほど美しい光景だった。
何万、何億という数なのかもしれない。
空から雨粒のように無限に光の筋が降り注ぐ。
いつも見ていた天体の夜空とは比べものにならないほどの数の星が頭上に広がり、夜とは呼べないほどに明るかった。
光はパン!と地面に触れ、実際には鳴っていない弾けるような音が頭の中でなる。虹色に光るミルククラウンが星の堕ちる数だけ現れ、それらのいくつかから確かに悪鬼が生まれる。
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