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口から煙草を離すと、男の後頭部に手を回し、銀色の髪を鷲掴みにした。
小さく驚いた男の顔を、強引に引き寄せ、唇を押し付ける。
くっついた二つの唇が醜く潰れ、――男の中に、思いきり煙をぶちまけた。
全て吐き出し、唇を離していく。
ぼやけていた男の顔が、はっきりとした形で目に映った。
オレは男を見下ろした。
すぐにまた、オレを見下ろすであろう男の目を、もう一度、見下ろした。
男は背中を丸め、苦しそうに咳き込んでいた。
でもなぜか、その顔が少し、嬉しそうに見えた。
何が嬉しいんだろうか。
わけが分からなかった。
オレは男を置いて、一人、リビングへ戻った。
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