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「まあしかし……腹が減っては戦ができぬ、とはよく言ったもので。 たしかに空腹だな……ふふ、頭の中がコラン状態かもしれないな、今の私は」
「もうじきお昼ご飯って頃合いだったものねぇ。……体感二時くらい? あーもう、お腹減ったぁ……」
ルナも私に苦笑いしながら零した。
「お母さんの料理が食べたいなぁ……肉じゃがとか、おでんとか……あったかい大根に辛子つけて食べたい……」
おぉぅ……その気持ちは痛いほどよく分かる。 うちの母は息子の腹の許容量は理解していないようだが、味の好みはよく知ってくれていた。 数日間食べないでいると、無性に懐かしく感じてしまう。
しかしその呟きに呼応してか、ルナの青い石がぽっと灯るような光を放った。 淡い青い光を見ているうちに、ふとある事を思い出した。
「ルナ、そのペンダント……」
「外してみたらどうかって?」
私の発言に被せてきた彼女も、どうやら私と同じことを考えていたらしい。 この石はルナの魔法のストッパーなのだ。 これを外したら彼女の魔法は格段にアップするというなら……つまりは先程接続出来なかった空間を、捉えることが可能になるのではないか。
「大事なもの……だものな、ルナにとって。 私がしっかりと預かろう」
「ありがと、頼むね」
そして彼女は青い石のペンダントを外して渡してきた。 ズボンのポケットでは心許ないかと思い、ウエストポーチに仕舞う。 先日ローゼにてファッション対決があった際に購入していた。 常にトドロキが物を自在に取り出しているのを見て、旅においては必需品かと私も必要性を感じたのだ。
「マサ、手ぇ繋いでて」
「あぁ」
言われて彼女の手をとりキュッと握る。 彼女は目を閉じて彼女の魔法に向き合っている。
「……行くよ」
言われた時には彼女と共に空間に溶け込んだ。
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