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「も、も、もうわかったよぉっ。でもたとえばさっ、推しのアイドルのMBTIを知って、『あっ、推しと同じだ~』ってなったら嬉しいし、『じゃあわたしも推しみたいに立派になれるかな』なんて前向きになれたりするもんっ! 悪いことばっかじゃないでしょっ」
「……なるほど。まぁ、ぼく、一言も『MBTIの全部が全部悪い』とは言ってないですけどね」
「へ?」
「いいと思いますよ、変に信じすぎたり、人に結果を押し付けたりしなければ。占いだって、ぼく、嫌いじゃないですもん」
「えっ、意外」
「というか、この前、妹に怒られたんです。妹は星座占いが好きなんですが、『そんなの当たるの?』って聞いたら、『当たらなくてもいいの。困ったり迷ったりしてるときに、そっとよりそってくれたり、背中を押してくれるものだから』って。……まぁ、それは一理あるなって」
「なるほどねー……」
「それに、信頼性のない検査だって、裏を返せば、自分のそのときの気分が簡単に可視化できるものだと思うんです。『いつもは建築家タイプなのに、今日は巨匠って出るな。なんでだろう』って。いまの自分に起こっている変化を見つめ直すきっかけになると思うんですよね」
「ふぅん……。心がつかれちゃってるときとかの目印になるかもしれないんだね」
「あくまで『かもしれない』の話ではありますが、そういうことです。だからまとめると、『今流行っているMBTIの診断は心理学とはいえない』『特にその結果で人を軽々しく判断してはいけない』『だけど使いようによっては前向きになれたり自分の状態を知るごく簡単な指標になったりする可能性がある』……ですかね」
「なるほどぉ、『用法容量を守って正しく使いましょう』ってことね」
「そういうことですね」
「……あー……時に、渡会くん。じゃあ、渡会くんの誕生日は?」
「は? なんですか急に」
「いいからっ」
「……10月1日ですけど」
「なるほど、てんびん座かぁ……。ビミョー……」
「まったく、今度は星座占いの本ですか? ていうか、そういうのに他人の性格を勝手に当てはめて、変な色眼鏡で見るのがよくないって話をちょうどしていたところで──」
「せ、性格を当てはめたわけじゃないんだけどっ。まぁ、占いだろうがなんだろうが、結局は自分の手で運命を切り開くべきだよね! うんっ!」
「……いったい、どこに向かって話してるんですか」
第五講 おしまい。
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