第三神 混迷する世界

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「その列車砲ってのは?」 「可搬型の大口径重砲ですね。」 「車輪を付けた大砲みたいなもんか。」 「そのイメージですが、従来の大砲とは比較にならない程巨大で有効射程も長く威力も高いです。 列車砲が量産されれば超長距離から軍事施設や首都を一方的に砲撃出来るようになり、 戦争の常識が変わってしまうため人類には早過ぎた代物として闇に葬った………はずなんですがね。 私も知りませんでしたが、どうやら表向きは処分した事にして裏で保管していたそうです。 結果的には、それに助けられましたが。」 「この有様で?」 「はい、居住区こそ吹き飛んでしまいましたがこの街の心臓である工房区は無事ですし、これによる被害者もありませんでした。 私は………私達は間に合いませんでしたが、子龍さんが自らの命と引換えに鉄刃龍アイアノーノの動きを止め、その隙に列車砲で街ごと吹き飛ばして仕留めたと聞いています。」 「そうか、子龍が………………」 「にしてもよく《鉄龍》一人で凌げたな。 街が襲われてる時素材採取班(あんたら)はまだ駆け付けてる最中だったんだろ?」 「いえ、子龍さん一人ではありません。 この街には現役を引退したハンターが多く。 彼らが命を賭して足止めし、そこを子龍さんが叩くという捨て身の作戦で何とか鉄刃龍アイアノーノの眷属を半分に減らしたそうです。 ………………鉄刃龍アイアノーノを倒すまでに皆死んでしまいましたが。」 「そいつぁ………………やりきれねぇな。」 ギッとロアは唇を噛む。 素材採取班のリーダーであり世界最高のハンターの一人と言われながら、何も出来なかった無力感。 街に到着した時には既に全てが終わり、血の海に大量の肉塊が浮かぶ光景は忘れられるものではない。 「今回の工業都市カルタゴ奪還作戦はこの街の工業を復活させる事を主目的としていますが、 あの時打ち捨てたままにしてしまった彼らをきちんと弔う目的もあります。 もう一年近くも放置してしまいましたから………………彼らに恨まれてしまいますね。」 「死んだ人間よりも、今生きてる人間の方が優先だ。 死んじまったら全て終わりだからな。」 工業都市カルタゴを囲む外壁が失われたため、住民が一時避難している間に魔獣の素材等に惹かれて街に住み着いたモンスターの大群。 それを掃討し街を取り戻す重大な作戦。 工業都市カルタゴの製品を多く使用するレオンハルトとしても他人事ではないため、助っ人して今回の作戦に参加していた。 そしてもう一つ、ロアと同じく子龍の死を確認し弔う目的もあった。
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