過疎化が進むお小遣い

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過疎化が進むお小遣い

「ただいまー!」 オレは声を張った。返事はまだない。 ずっとない。仕方ない。 玄関を開けた瞬間、いつもとは違う匂いがした。原因は置かれた大量の猫グッズ。 米が入った袋みたいなエサ、缶詰めのエサ、お菓子のような猫用おやつ、赤ちゃんを風呂に入れるバスタブみたいなトイレ、猫の砂?どんな砂やねん、オシャレな(おり)などなど、たくさん。 通れんやないかっと心の中で叫びながら、作業着を脱ぎ洗濯機に何も入ってないことを確かめる。 何も入ってない。大丈夫。 脱いだ衣類を入れ洗剤と柔軟剤を投入しスタート。 そのまま、みんなが入ってぬるくなった風呂へ入る。 頭は二回洗うこと、シャワーは使わず浴槽の湯を使うこと、オレ用のスポンジを使うこと、オレ用のタオルを使うこと。 何も約束事は見落としていない。 風呂から上がり「ただいま~」と言いながらリビングのドアを開く。 「パンツ一丁は止めてって言ったよね?マジ嫌なんだけど」 よしよし、今日も娘は元気だ。 妻はビールを片手に「今日色々と子猫ちゃんグッズ買ったから、お小遣い半分ね」とテレビを見ながら言う。 明日からは、のり弁を二日に分けて食べるしかない……ビールは一本か……さすがにきつい。 猫のためにオレは我慢か? これだけはポジティブには考えられない。 「それは仕方ないな。で、猫は?」 「明日連れてくる。今日は予防注射とノミの検査に奥様が連れて行ってくれたらしいから。有難い限りよ。動物病院は保険なんてないし。すごい金額なのよ。おかげであなたの小遣いが無くならなくてすんだわ」 奥様、ありがとう。
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