邪眼、涙を落とす ―― 狐の窓 ――

逢う魔が刻

西の方(かた)、地平線が紅(くれない)に染まる。

そんな頃合いであった。

背後では、地球(だいち)の影が空へと昇っていく。

私は足を止めて振り返った。

黒から濃紺、青へと徐々に風合いを変える景色が、空の半分を覆っている。

夜の帳(とばり)が上がっていく。

私は逢(お)う魔が時――大禍時(おおまがとき)とも――と昔の人が呼びならわした、この時間が好きだった。

時として、本来見えないはずのものを見ることがあるからだ。