本番前

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四人で撮ってもらった写真を確認すると、颯真は双子を向いて頭を下げる。 「ありがとうございました」 「ありがとう、二人とも」 「会誌が出来たら、二人にも届けるから」 この後も、別のアーティストと写真を撮るという双子の先輩と別れて、二人は控え室に入る。 「ソウ、さっきはありがとう」 「いいって。それより、どんな会誌か楽しみだね」 双子が会誌をくれなくても、颯真は研究も兼ねて、双子のファンクラブに入っているので、会誌は手元に届くのだが。 (まあ、二冊届いたら、一冊は姉貴にでもやるか) ミーハーな颯真の姉貴は、双子の先輩のファンでもあったはずだ。 待ちくたびれていたメイクさんに案内されて、二人は化粧台前に並んで座る。 「ファンクラブが出来たら、自分たちもああやって写真を撮るんだね……」 「そうだね」 IMにはまだファンクラブがなかった。 おそらく、その内出来るだろうが、今はアイドルとして軌道に乗る事のが先だろう。 「うう……。写真撮影もまだまだ慣れないから緊張する……」 「その内慣れるって。今の内に研究しといたら?」 「研究って……何が?」 メイクを直してもらいながら、鏡越しに水月が視線を向けてくる。 同じくメイクを直してもらいながら、颯真も視線を向ける。 「カッコよく撮れる方法や、可愛いく撮れる方法について。今時、スマホで調べればたくさん出てくるだろう」 特に女子なら、自撮り写真をインターネット上に投稿する上で、そういったサイトを知ってるだろうと、思って颯真は言った。 ただ、水月はそういった事にあまり興味がないのか、首を傾げただけであった。 「そうなんだ? じゃあ、調べてみる」 そうして、メイクをされながらマネージャーに頼んで持ってきてもらったスマートフォンで調べ出す水月を眺めると、同じようにマネージャーにスマートフォンを持ってきてもらった颯真もスマートフォンで調べ出す。 SNSでは、今日の歌番組に対する期待や応援メッセージが沢山発信されていた。 その中には当然、IMや颯真個人へのメッセージもあった。 (頑張らないと) ファンの笑顔を見るのが好きだった。楽しませるのが好きだった。 だから、今日という日を楽しい日にさせたい。 ファンにとってもーーIMにとっても。 「ソウ、もう終わった?」 いつの間にか、水月のメイクは終わっていた。 「ああ」 丁度、颯真のメイクも終わったばかりだった。 スマートフォンをまたマネージャーに預けると、颯真は控え室の壁掛け時計を見つめる。 「そろそろ、ステージに行こうか?」 「うん!」 同じように、水月もスマートフォンを預けると、颯真に続く。 廊下に出て、ステージに向かいながら、傍らの水月に声を掛ける。 「もう緊張は治った?」 「う、う〜ん。まあね」 ステージに近づくと、客席の歓声も近づいてきた。 さっきの双子の先輩など、他のアーティストたちも続々と集まってきていた。 「精一杯、楽しもうか」 「うん!」 顔を見合わせると、二人は互いに頷き合う。 「本番までのカウントダウンを始めます!」 ステージ近くから、スタッフが声を張り上げる。 光と影のコントラストのステージの開幕まで、あと僅か。
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