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スタジアムへ…… 3
どういうわけか雷亜もアメフト部と共にスクールバスに放り込まれ、着いた先はスタジアムのど真ん中だった。
観客席は既に沢山の人でごった返し、チアガール達がフィールドで華やかにパフォーマンスをしている。これぞ、アメリカという風景に、今更ながら自分が留学してきたことを実感した。
「なあ、ジョージ。何でこいつまでここに連れてきたんだ?」
雷亜をずっと担ぎ上げていたリズリーが、フィールド内のベンチに雷亜を座らせ、訊ねた。
「ああ、それは暇潰し。だって俺、今日はスタメンじゃねーから、試合中つまんねーだろ?その間、こいつを弄ってようと思ってさ。お前も、よく考えてみ、こいつシャノンに告白したんだぜ!男だし、この顔でよくそんな真似が出来たよな。面白れー奴だから、奴隷にしようかと思って、これぞまさに『愛の奴隷』なんつって!くっししし」
ジョージは下品な笑い方をした。
雷亜が身を小さくしていると、リズリーは眉を寄せた。
「愛の奴隷?意味がわかんねー」
「だからよー、こいつに愛の試練を与えてやるのさ。それを見事に乗り越えたら、ああ、こいつの言ってる事は本当なんだなあ、って信じてやる。だが、この試練を乗り越えられなかったら、こいつは本物の『嘘つき』だ!なあ、嘘つき!俺はそれまで、『嘘つき』の意味を込めて、お前の事をlierって呼んでやるからな!lier!lier!」
ジョージはバカの一つ覚えみたいに、嘘つきを連呼した。
「要するにお前は苛めのTargetが欲しかっただけだろ」
「ああ、そうだよ。八つ当たりや暇潰しにこういう奴が居ると精神衛生上いいだろ?」
雷亜は青ざめた。
(される方の精神衛生は全く考えないところが酷すぎる……)
こいつが人として雷亜を全く扱っていないのがよく分かった。
(シャノンも同じなのだろうか?)
シャノンに再会したあの時、彼の表情が一瞬、不快な顔をしたのを思い出した。
雷亜は遠くでヘッドコーチの話を聞いているシャノンを見つめた。
アメフトのプロテクターが彼の肉体をより強化し、腰に繋がるラインがとても優美で、やはりどこからみても格好良かった。
観客席からはシャノンの名を呼ぶ、女の子達の黄色い歓声が止めどなく続いていた。
(同じ高校生なのに、ここまでくると本当にスターだな……)
日本からアメリカへ来て、目と鼻の先に近付いた筈なのに、日本に居たときより、シャノンの存在を遠くに感じた。
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