αだって・・・

☆０☆

　この世界は男女の他にそれぞれα、β、Ωと６つの性が存在していた。

　αは全ての頂点であり全てを導き支配する者。
　βは一般人。
　Ωは庇護対象であるがその性ゆえに軽視され、ヒートによる望まない性交、妊娠及び番関係を結び一方的にαが解除するという被害を受ける事が多かった。

　αはその事に無関心で、Ωはどうにもならないと諦めていた。

　しかし、そこで立ち上がったのが一般人であるはずのβだった。
　βは性的フェロモンに左右されない。
　βは人口の八割にも及ぶ。
　それだけいれば中には優秀な人間も出てくるわけで、バースについて定められたバース法に新たな一文を加える事に成功したのだ。

　『突発的なヒートによる番関係は解除する権利を有するのはΩ性のみである』

　これは一見すると何が変わるの？　と思うかもしれないが、番関係を結ぶ事ができるのはαにしろΩにしろ同時に複数とはできない。
　であるのでΩを悪戯に番にしてしまってα側が解除してなかった事に、なんて事が出来なくなったのだ。
　それは無理やり番にされてしまったΩが反撃のチャンスを持った、という事だった。
　仕返しに番関係の解除をしなかったり、解除するにしても多額の慰謝料を請求したり、とΩにとって大きなアドバンテージとなった。

　αはその事実にいち早く気づき、恐怖し、悪戯にΩを貶める事も減り、性に関係なく誰もが安心して過ごせる世の中になった、と思われた。