殺し屋は果たして操り人形だろうか?

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 前川はたじろいだ。相沢に敵意のない目を向けられる度にたじろいてしまう。本当に殺し屋なのかという疑問はもちろんのこと、どうにも底知れない目で気持ちが落ち着かないのだ。 「前川さん。日本人の味覚はいつから崩壊したんですか?」 「は?」  質問の意味が解らず、前川は固まってしまった。日本人の味覚が崩壊? 一体何の話をしているのやら。 「だって、チョコと梅干が合うなんて思えませんが」  相沢は腕を組んで首を傾げた。 「チョコと梅干」  確かに、考えただけで口の中が混乱する。甘いのか酸っぱいのか。はっきりしてもらいたい。というか、まず混ぜようと思わないでほしい。それが正直な感想だ。 「気持ち悪いですよね」  感想は見事に相沢と合致した。こういうところは普通なんだよな。おかげでますます拍子抜けしてしまう。本当にこいつが今までに百人以上の人間を闇に葬ってきたのか。ひょっとしてそれはただの嘘で、本当はどこぞのお坊ちゃんであるこの相沢を監視させたいだけではないのか。  前川はまだぶつぶつ言っている相沢を見て思う。  本当に殺人なんてできるのか。
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