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「マスターから、お料理の担当をしていただけるかもとお伺いしたのですが」
「ああ、そうだ」
「お客様からご予算やご要望など預かっておりまして。そちらを確認してから、お引き受けいただけるかどうか判断していただけましたら……」
ファニーニャさんとリグさんが話を進めていく。私は時折、横から補足を入れるだけだ。
今度のお客様は、あちらの世界のSランク冒険者というご職業で高難易度ダンジョンに潜ることができる高給取りだ。なので今回のご予算はかなり潤沢である。大げさではなく、『こちら』で結婚式でも挙げられそうな費用をご提示いただいているのだ。
それだけ期待をされているのだと思うと、緊張を少しどころじゃなくしてしまうけれど……。せっかくなら、期待に添えるように頑張りたいよね。
「ずいぶんと予算があるようだな」
リグさんは提示の予算を聞いて、目を丸くした。気持ちはわかるなぁ。最初、私もびっくりしたもん。リグさんは『ふむ』と小さくつぶやいてから、楽しそうに口角を上げた。大きな尻尾も揺れていて、一見して機嫌がよさそうだ。これは、もしかして……
「腕が鳴るな」
リグさんはそう言うと、私たちに笑顔を向けた。
うわぁ、美形の笑顔が眩しすぎる!
というかマスターもファニーニャさんも輝かんばかりの美形だし、この場の私以外の顔面偏差値……おかしくないかな!?
ここに居座れる程度に図太い性格をしていたよかったな。心が弱ければ女性としての自信を喪失し、尻尾を巻いて逃げていたかもしれない。
ひとまず得したなぁって喜んでおこう。うん。
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