7/12
1269人が本棚に入れています
本棚に追加
/125ページ
「ねりまゆうた君。だからユウなんだね。なるほど。よろしく練馬君」    壁のスイッチを入れる。  玄関のライトに加えて、二階へ続く階段のライトが点く。 「ユウでいいって」  練馬君は顔をしかめて言うと、俺の肩をポンポンと叩いてきた。  俺より明らかに年下だし、背も低い。黙っていたら女の子みたいに可愛い系なのにこの偉そうな態度。 「ぷぷっ。そっか。じゃ、ユウにしようかな? 二階へ案内するよ」  ユウは片眉を上げ、へらぁと笑い「ん」と、小さく頷いた。  俺も頷き、先に階段を登る。  二階はキッチンカウンタのあるリビングダイニングと、寝室の二部屋。リビングダイニングは十二畳。寝室は六畳半だ。  寝室の隣には風呂とトイレがある。  キッチンに入ると、ユウも一緒に入ってきた。カウンター越しに見えるリビングを顎で指す。 「風呂入れてやるから、ソファで座ってていいよ」 「えらくサービスいいんだね。じゃ、お言葉に甘えて」  ユウは上着も脱がないままボスッとソファに座って、ローテーブルに置いてあったリモコンを持ち、勝手にテレビを点けた。  それを観察しつつ給湯器のスイッチを入れて、エアコンも入れる。  コーヒー……は飲めなさそうだし、冷え切っているからココアとかホットミルクがいいのかな? でもそんな物はここには無い。  最初の警戒を忘れ、小さな鍋にお湯を入れながらソファでくつろぐユウを見て考えた。  うちにあるのはコーヒーと酒と、コーンスープくらいだもんなぁ。 「ブラックでいいよ」  テレビに目を向けたまま、考えでも読んだようにユウがポンと言った。俺は呆気にとられ、ハッと我に返った。 「あ、そうなんだ。コーヒー飲めるんだね」  鍋のお湯を捨て、コーヒーメーカーをセットする。  なんだか初めての生物に合った気分だ。世の中にはこういうタイプの人間もいるんだな……。
/125ページ

最初のコメントを投稿しよう!