5.年末年始

7/7
51人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ
「モト、一緒にやらね? アキはユキちゃんとやるみたい」  モトが誘ってくれたので頷いた。  しばらく待っているとおばさんが「やりたい子は並んでください」と言ったのでモトと並びに行った。  小学生のほとんどは参加していたけれど、中高生の多くはあまり参加していない。  一グループ二十回、ということでそこまで待たずに出番がやって来た。  おじさんから杵を渡されて二人で持った。ずっしりとした重みが伝わりニ、三歩よろめいた。 「大丈夫?」  モトがもう少し力を入れて持ってくれたので、少し軽くなった。   「はいゆっくり下ろしてね」  よいしょ、と杵を振り落とす。ズーンっとお餅を打った感覚が伝わって来た。ゆっくりと力を込めて杵をあげる。 「せーのっ」  ペッタン、ペッタン。おじさんたちほどスムーズでは無いけれど、二十回つくことができた。 「楽しかったな! この後は餅食べれるよ。あんこと、きな子、のり醤油に砂糖醤油があるんだ。後お汁粉もある」    全員がつき終わって少ししたらいよいよ実食だ。  せっかくだから初めてのお汁粉に挑戦することにした。  粒あん、突き立てのお餅が浮かんでいる。  ユキちゃん曰く、お汁粉の呼び方は地域によって異なるらしい。  関西ではぜんざい、と言うようだ。  アキを除いて一班は皆、お汁粉だった。  一口すすると甘い味が口に広がり、疲れた体に染み渡った。  突き立てのお餅はとても柔らかく、朝食べたお餅よりうんと美味しい。 「美味しいね」 「きな粉も美味しいよ」  アキは口周りにきな粉をつけて笑っていたので、思わずみんなも笑ってしまった。  慌てて笑いを堪えて俯いた。やっぱり、目立つのは苦手で怖い。 「茶色の髭のサンタがいるぞぉ」  モトはそう言いながら優しく拭ってあげていた。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!