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──お姉ちゃん、ちょっと貸して……。
──だって、よっちゃん。
電話の向こうで何やらやり取りする気配の後、聞こえた声は叔母さんのものだった。
『宙ちゃん、いきなりごめんなさい。姉さんはそう言うんだけど、宙ちゃんだって迷惑よねぇ。無理なら断ってくれていいのよ』
──よっちゃん、何言ってんの? 迷惑なんてそんなワケないから! 変わって、電話!
下手したら、電話を持ってる叔母さんより響く母さんの声。
ついでに、真尋は合格したら当然自宅外通学になるんだけど。
「困ったら宙を頼ればいいから! なんなら一緒に暮らさせる?」
初めて親元を離れて一人暮らしをするかもしれない可愛い息子を心配する叔母さんに、母さんがドヤ顔で告げたという台詞。
何を勝手に決めてんだ。イヤ、学費も家賃も出してもらってるんだから、俺に拒否権はないと言われれば返す言葉もないな。……別にそうなったらなったで、俺はいいんだけどさ。
なんで姉妹でこんな性格が違うんだろ、ってかそれなのに今も仲良くしてる方が不思議だよ。
まあ母さんにしてみれば、穏やかで優しい年の離れた妹が可愛くて、力になってやりたいんだろうけど。
叔母さんの方も、自分のための言動だって理解してるだろうし。
実際、母さんはちょっと厚かましくて困った人だけど、息子の贔屓目じゃなく決して性格は悪くない。明るくて気のいいおばちゃんだ。
他人ならきっと微笑ましく思える。……他人ならな!
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