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用があるからと、打ち上げは参加せずに帰宅することにした。 私だけになってほしくない。 他のお付き合いも大切にしてほしかった。 のは、建前で。 渋沢さんから聞かされた湊の私への気持ちの大きさに、戸惑っていた。 嬉しい気持ちと、自分の中にあるドロドロした思い。 電車に乗ろうと地下へ降りたけれど、帰る気になれず、地下街を歩く事にした。 何を買う訳でもなくお店を見ては次のお店へと。 香辛料やらお茶やら並ぶお店の一角にテーブルと椅子があり、男性が腰掛けて本を読んでいた。 変なお店…次行こ… 「ちょっと。」 「私ですか?」 「他に人が見えるのかな?」 「見えませんね。」 「じゃあ、アナタだよ。お茶入れてあげる。座って。怪しくないよ。変だと思ったらすぐ逃げれるでしょ。」 確かに地下街は壁がないよね。 変な人。 普段は無視するけれど、なんか気になった。 「これスリランカのお茶。美味しいよー。」 「では、お言葉に甘えて。ん。 美味しいっ。絶妙な風味ですねこれ。」 スパイスが今まで味わった事のないものだった。 「落ち着くでしょー。沢山は飲んじゃだめだよ。」 「へー。」 「ふふっアナタ面白いね。」 「そうですか?」 (どう見てもあなたの方が面白いですけど!) 「可愛いから見てあげる。 名前と生年月日書いて。生まれた時間もね。」 チラシの裏側とペンを差し出された。 「じゃあこれ。」 私が書いたチラシを受け取ると、その初老の男性は古いノートを開いた。 「これ本当?嘘はだめよ。」 「え、バレました?」 「ちゃんと書いて。」 私は怖くて、全く違うものを書いていた。 恐る恐る、本当のものを記載した。 「どれ。」 チラシを手渡すと、初老はまた汚いノートをめくっていた。 「アナタまず一生お金には困らない。 ラッキーガールだね。 でもあなた自身はお金とか名誉に全く興味がない。 それと、まだ実家に住んでる? 早く家出たくてしょうがないでしょ? あなたにあの家はせまいね。 あー、あと、うーん、来年、結婚する。 で、離婚するよ。 2年ぐらいで離婚。 アナタ凄くモテるよ。離婚しても直ぐ次の人が出てくる。」 「ハズレてます。」 「今迷ってる人、ソウルメイトだよ。離れられない。別れてもまたくっつく。」 どっちが?と聞きたかったけれど、聞いたら怖くて聞けなかった。 「お茶、美味しいです。」 「2杯は飲めないからね。もっと飲みたいなら次はお水飲んでね。」 「そうですか。」 私は急に不安になり、用事を思い出したと行って、店を出た。 インチキに決まってる。 小走りで地上への階段を登った。
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