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倉庫にはまだ数名の捜査員が残っていたが、山田の遺体は既に運ばれ、跡にはブルーシートで覆われていた。
佐向は出来るだけシート見ないように、不自然に顔を背けている。
「すみませんね、ご足労おかけします」
「いやあ、こんなこと初めてで・・・」
佐向はそう言いながら、倉庫の確認を始めた。
「早速ですが佐向さん、あれなんですかね?」
やはり南も気になっていたのか、手を指した先には吊るされた布があった。
「ああ、これね、これは藍布だよ」
「アイヌノ?」
「この地域の名産品だよ、藍色に染めて、ここで干してんだよ」
「山形さんの倉庫で?」
「いや、山形さんの家族からは好きに使ってもいいって言われてるから、暗所だし、物もでかいから丁度いいと思って・・・まずいの?」
「いや、別に・・・」
「これって、法律違反じゃないよね?」
急に不安になったのか、佐向は目を丸くしながら徳利と南を何回も見返した。
「大丈夫ですよ、問題ないですから」
佐向は小さく息を吐くと、今度は壁際に備わった棚に向かって歩き始め、つられて徳利と南も棚に注目した。
棚は二メートルほどの大きな木の枠で、上下の二段に分かれていた。
下の段は何かがシートに掛けられているが、陰になっていてよく見えない。
「下のシートは、何ですか?」
「ああ、これは畑で使うもんだよ、暗くて見えないか・・・」
佐向はそう言うと、棚の反対側の壁に向かって歩き出した。
端に立て掛けてあった脚立を壁の真ん中に移動すると、佐向は手慣れた様子で脚立を登り始めた。徳利達には暗くてよく見えなかったが、やがて鈍い音と共に光が差し込んだ。
「これなら、よく見えるだろう」
徳利と南は日差しを手で遮りながら、後ろを振り返り棚の中身を確認した。
佐向の施しもあって、棚の奥まで目視することができるようになった。
棚の二段目は、確認するまでもなかった。
農業道具やホースなどが乱雑に置かれていたが、どれも埃がこびり付き、道具の色をくすませる程であった。
徳利達が棚に目を向けている間に佐向が棚に戻り、さっきまで話していた下段のシートを、ぶっきらぼうに剥がしていった。
「ほらこれ、こんな物盗るやついないだろ」
「はあ、上の段はどうです?」
「上の段、大丈夫だと思うけどなあ・・・あれ?」
佐向は棚から、一冊の本を取り出した。
「こんなものが・・・何でここに」
「何ですか、それ?」
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