オカワリサマ7

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オカワリサマ7

数時間後、回覧板を渡しに来た近所の主婦が祖母の亡骸の傍らにへたりこむ真理を発見した。 主婦は大慌てで通報し、真理は警察に保護され、その数時間後に両親がむかえにきた。 「本当によかった無事で……」 車の後部座席に乗り込むや、度重なる話し合いの末に浮気相手と切れた母が涙ながらに娘を抱き締める。 「おばあちゃんは自殺らしい。鑑識が終わらないと断言できないが」 「当たり前でしょ、この子がお義母さんを殺したとでも言いたいわけ!?」 「思ってないよそんな事、でもあんまり不自然じゃないか口に飯を詰めこんで窒息死なんて。箸はどう説明するんだ、力尽きる前に自分で立てたってのか」 「死んだ人を悪く言いたくないけどお義母さん変わってたから……後継ぎがいないって悩んでたみたいだし、思い余って自殺もないとはいえないわ。変な神様を拝んでたんでしょ、オカワリ様とか。座敷牢を発見した警察が驚いてたわ、あれじゃまるで誰かを監禁してたみたい」 「口が過ぎるぞ」 「事実でしょ?よりにもよってお義母さんなんかに真理を預けるなんて……」 母がヒステリックに取り乱し、ますます強く真理をかき抱く。 夫婦でやり直す事に決めたはずなのに諍いばかりしている両親をよそに、シートに行儀よく座った真理は、瞬きも忘れた虚ろな目で宙を見詰めている。 「可哀想に、ショックを受けて……」 「すまない真理。お前が一番辛いのにな」 運転席から乗り出した父が真理の頭をなで、母が優しく頬に触れる。 オカワリ様はお代わりを欲しがる。 最初は人間らしく食べる為の箸を、次は桜の花びら模様の素敵な茶碗を、次は真っ白であたたかいご飯を。 ならば最後に欲しがるのは…… 自分を心から案じる父と母を等分に見比べ、瞬きを忘れた真理がたどたどしく口を開く。 「おかわりちょうだい」
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