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 ――なんだ、なんだ? この状況。  数秒前の自分は、とんだバカ野郎だった。  たまたまいつもより早めに部活を終え、荷物を取りに教室へ戻った俺は、出入口から中の様子をうかがう幼馴染――ひまりの姿を見つけて、のん気に声をかけようとしたのだ。  だけど、その背中が妙に強張っている気がして、なんとなく先に顔を覗き込んで――やめた。  ひどく驚いて――傷ついた表情をしていたから。  全部、分かる。こいつがどんなときに、どんな顔をするのか。  自分でもキモいって思うけど、ずっと、ずっと見てきたから。  最近は思春期ってやつのせいか、話す機会はめっきり減ったけど、家が近所で、物心ついたときから高校まで一緒。伊達に幼馴染をやっているわけじゃない。  声かけようとしたのはバカだったけど、わずかな異変を察知して、踏みとどまったのは褒めたい。えらいぞ、俺。  そう思いながら、名前のごとくいつもひまわりのように明るい彼女をこんな顔にさせた原因を突き止めたくて、幼馴染の視線を辿る。  するとその先には、 「あ……」
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