19. 愛と知っていたのに

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蓮と俺は恋愛ではなく、ゲームをしていたんだ。 本気になったら負けのゲーム。 どちらも負けなかったけど どちらも勝ってない。 だって俺はずっと蓮が好きだった。 でも蓮の中の倫斗と戦うのが怖かった。 戦って傷つくのが怖かった。 だから戦う事から逃げた。 政実の事も同じだ…。 基本的に男に興味のない政実に ぶつかっていく勇気がなかった。 失敗したら、政実を失う気がして……。 リストラされショックを受けて、しんどかった時は 何度も携帯の蓮のアドレスを開いて見た。 でもその時には、もうずいぶん蓮とは連絡を とっていなかったし、自分が困ったときだけ 頼って連絡するなんて、あんまりにもズルい 気がして、ついに連絡できなかった。 変わりに政実や、元の同僚に励まされ支えられ どうにか乗り越え そして“彼”に出会ってしまった。 彼と暮らしはじめて、もう1年以上だ… たった1年でも色々な事があって、今では 彼のいない人生なんて考えられないとさえ 思える…。 これから先に待っているどんな事も 彼のためなら、彼と一緒なら頑張れる そんな存在に俺は出会ったのだ。 今日はこれからバレンタインディナーに 出かける。 バレンタイン…蓮の誕生日。 だからこんなに色々思い出すんだ。 元気にしてるかな? 俺のことなんてもう忘れたかな? もう一度だけ会いたい。 会って、俺は今元気で幸せに暮らしていると 伝えたい。 あの頃どれほど蓮に支えられたか… ありがとう、と言いたい。 会えなくてもずっと願ってる。 どうか幸せでいてほしい。 「買い物もしたいし、そろそろ準備して出よう」 「うん、蓮とデート久しぶりだね」 「……は?」 ー しまった!なんてベタなミスを…!! もう何年も連絡すらとってない人の 名前と間違えるなんて! 両手で口をふさいで彼を見た。 眉を上げて射ぬくように俺を見返している。 もっと上手く誤魔化せば良かったのに 露骨にミスしたとバレる態度をとってしまった。 「…誰?それ …」 俺は凍りついたまま、首を小さく振った。 彼はフッと笑って立ち上がると ゆっくり俺の後ろに歩み寄って ぎゅっと強く肩を抱く。 「怒らないから 教えて?」 耳に唇をくっつけて、冷たく囁かれた。 ー もう怒ってるくせに! 冷や汗をかきながら、震える唇をどうにか開く。 「……む、昔の…」 俺はそれから文字通りベッドに縛られて 追及され、過去の相手で、もう何年も会ってないと 彼が納得するまで 責められ続けた。 お互い立てなくなるまで夜通しヤり続け… 太陽が昇る頃、やっと仲直りした。 バレンタインのディナーは キャンセルになった。
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