《帰りたい》

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《帰りたい》

それから幾らかの時間が過ぎ… 「…!しまった、寝すぎた…」 いつのまにか横になり、寝入ってしまっていた、目覚めると…辺りは真っ暗になり、夜になっていた。 「今、何時だろう、早く帰らなければ…」 敬大くんに心配をかけてしまう。 何とか起き上がるが、気持ちに反して身体が重く動いてくれない。 (なんだ…身体が…、のどが乾いたな…) 「……ッ」 無理やりにでも立ち上がろうとした時… 「うわ、」 バランスを崩して地面に倒れこんでしまう。 「痛ッ…」 起き上がろうと手足に力を入れるが… 手が痺れるような感覚と、手の震えが止まらず、思うように力が入らない… 突っ伏したまま動けなくなる。 (なんだ…どうしたんだ?…早く、帰らないと、いけないのに…) 「…ッ、」 意識が朦朧(もうろう)として… (敬大くん…ごめん、明日には、帰るから…) 心でぽつりと謝り… 外界から見えない橋の下で、倒れこんだまま意識を失うあずま。 ※※ 野球の練習に参加して、夜の弁当を二人分買っていつものように家に急ぐ。 「ただいまー!あずまさん?」 アパートに戻るが、出迎えはない。 「あれ?まだ帰ってない?」 あずまさん、空き缶集め、いつまでやるんだろう。 こんな時、携帯電話をあずまさんに持たせていたらと思うけれど… バイトまでの時間、ギリギリまで待ってみようか… やっぱり、あずまさんがいないと不安で仕方ない。 あずまは戻らず時間だけが過ぎていく。 (帰ってこない、どうしよう、バイトあるし…あ、GPSがあるんだった!ちょっと確認してみよう) 思い出してあずまに持たせたGPSを検索してみる。 3丁目の橋のあたりにいるな…動いてないから休憩してるのかな? バイト先の方向なら確認に行こうと思ったけれど…3丁目は正反対だ… 「……」 そんなに遠くないし、バイトから帰るまでには戻ってくるかな… とりあえずバイト行かなきゃ… 心配だけど、朝、ちゃんと帰ってくるって言ってたから… 心配しながらも、遅刻してはいけないと思いバイトに出かけていく敬大。
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