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「はい・・・2千万ほど残っています」
「そのことで、今日は父のところに行ってました」
デートじゃなかったんだ。そう思うと、ほっとした。
「哲が相続したいくつかの特許をKISARAGIが独占的に使用できるという契約金として負債額の全額を負担するということで決まりました。勝手にすまないと思ったのだが、なるべく早く決めてしまいたくて、事後承諾になってしまって申し訳ない。登録の更新料も今後KISARAGIで負担します。」
淳一がそこまで、自分のことを考えてくれていたことが嬉しかった。
「ありがとうございます。正直、自分が持っていても、もったいないものだったし、それ以上に更新料が結構な額になってしまっていて放棄することも考えてました。僕は、どうやって恩を返していけばいいのでしょう?」
「恩なんてないですよ、単純にKISARAGIは哲が持っている特許を使いたい、フィフティ・フィフティです。」
「それに、俺は哲に救われた。あの時、哲に出会ってなければ、前髪を伸ばし、何も見ないようにして生きてきたかもしれない。」
腕の中にすっぽりと収まっている哲の手を取ると、その手の薬指に唇をあてる。
「明日、新しい指輪を買いに行きましょう」
「え?」
「今までは、何か困ったことがあったら助けるという約束用の指輪。今度は、ずっと一緒にいたいと言う約束の指輪です。愛する人はあなただけ、約束をしてもらえますか?」
「はい」
哲は淳一に馬乗りになってキスを仕掛けると、淳一は哲の背中に腕を回して抱きしめる。
「それから、この一週間、愛する人と一緒にいるのにずっと我慢してました。一回くらいじゃ、足りません。」
「僕もです」
そう言うと、二人で顔を見合わせて笑う。
「あと、もう一つ」
「なんですか?」
「哲の部屋にあるベッドも使用禁止です」
「え?」
「これからは、このベッドで二人で寝ます」
哲は満面の笑みを浮かべて「はい」と答えた。
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