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子供のころから選ぶのが苦手で親から好きなお菓子を選べと言われて10分以上座りこんで悩んでいたのに決められなかったことがあるらしい。
それからは親は僕に何かを選ばせることはやめたのだと言っていた。
成長しても僕は変わることなく「好きです」と告白されれば断る言葉を考えてる間に流されるまま女の子と付き合うことになり1か月もしないうちに僕の優柔不断な態度が嫌だと別れを彼女からつげられたのだった。
僕は同姓からの告白も断ることができなくて気がつけば自称の恋人たちが鉢合わせしてしまい巻きこまれる形で刺されていた。
享年23歳とか…若すぎる。
自分で蒔いた種だけれど決断力のない僕でも生きられる世界があればいいのにと薄れゆく意識で願い
アスファルトに仰向けに倒れてる僕の瞳は雲の少ない青い空を映していて
太陽の光を反射するキラキラした何かが空から僕めがけて落ちてくるのを閉じかけた瞼の隙間から見た気がした――…
苦しさで目が覚めた。
ついさっきまで聞こえていた言い争う声が生々しく耳にのこっている。
不快な汗が肌に服を張りつかせ心臓が不規則なドクンドクンッと荒れた音をたててるし体は死後硬直してるかのように動きが悪く冷たかった。
体を丸めて乱れた呼吸を落ち着かせるために深く息を吸ってゆっくり吐き出したのに何故かゲホゲホと涙が出るほどと咽ることになった。
刺されたはずの場所を左手で押さえたのに手に血がつくこともなく見覚えのない服が涙で滲んだ目に見えた。
強く握りしめていた右手には不思議なコインがあり
とても軽くて薄いのに安っぽさがないのは芸術品として展示したほうがいいような美しいデザインがあるからだ。
どちらが表かは分からないが片面に西洋のドラゴンの横顔。
もう反面にはフェンシングで使われるような細い剣が2本交差して×印の形をつくりどちらも記号のような細かい模様で縁取りがされていた。
なんでこんなものを持って……?
いや、僕は死んだよね!?
………服の下にも傷がないんだけど。
ここが死後の世界?
周りには何もなく床には大きも色もバラバラな丸いものがいっぱい落ちていて床が見えないくらいに重なりあってる。
ほんと何もないし誰も来ないッ!
(時間はわかんないけど僕はかなり待った。動くの怖いからひたすら待った。……けど変化もなければ死後のお迎えは期待できそうにないことを理解した)
死んでるのに僕は空腹を感じるんだけど、なんでだろう!?
食べ物もないのにどうすれば・・・
……………これ、食べられるのか
足元のカラフルな丸いものを手で持ち上げて恐る恐る齧ってみる。
ん、ん???
赤っぽいのは食べたら体がポカポカ温かくなり青いのを食べたら渇きが満たされて黄色はピリピリと舌が刺激され緑、白、黒と食べていたら僕の頭上に影がさし、しだいにそれは大きくなって見上げるよりさきに強い風圧に目をつぶり瞼をあけたら
ゲームでしか見たことのない鱗で守られた像よりもはるかに大きな体と爬虫類特有の縦長な瞳孔が金色の瞳が僕を見つめていた。
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