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――これで本当に、私たち。一緒になる。そして、もしかしたら。私の中に、もしかしたら!
琴子の首元に顔を埋め、ただひたすら男の行為に集中する英児を抱きしめる。耳元に我を忘れた男の熱い声が、琴子の胸を激しく貫く――。
「はあ、琴子、琴……」
琴子も目をつむった。その感触を待って……。そうしたら私と貴方の家族が……。とてもドキドキした。
『カチャリ』。
微かな異音? 男と女の湿った空気が二人きりの部屋いっぱいに取り巻く中、小さく乾いた音。気のせい?
それは気のせいではなく、英児も気がついた。あんなに夢中になっていたのにピタリと彼の動きが止まる。こんな暗闇の中でも英児は何かを察知した夜行性の生き物のように過敏に反応している。素早くタオルケットを引き寄せ琴子の裸体を隠した。
その尋常じゃない警戒した目線が、このベッドルームのドアへと向けられる。
嘘――。二人だけしかいないはずの彼の自宅に、もう一人誰かがいる!?
恐ろしく警戒した英児の眼差しの先、そこに『人影』。琴子の心臓が止まりそうになる。確かにドアのそこに人がいる!
英児が信じられないことを薄闇でつぶやいた。
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