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ジュンちゃんとこたつでミカンを食っていた。昼ご飯のあと、テルおばちゃんは忘年会の準備と言って公民館にでかけた。俺とジュンちゃんのふたりだけになった。
茶の間の窓から見える空はどんよりして今にも雪が降りそうだ。やっぱりきょうはエイちゃんちに行くのはやめよう。あしたはジュンちゃんが帰る日だし。
おばちゃんちでいっしょに冬をすごすのは三年目だ。美人で明るくて、中学二年で、頭が良くて、スケートがうまくて、口が悪いこと以外、いまだになぞの女子だ。
俺もそうだけど、ジュンちゃんは家のことや地元のことはなにも話さない。テルおばちゃんちにいれば、そういうことを話さなくても楽しくて、ほっとできた。
「ゆうべ、おばさんから聞いたんだけどさ」
ジュンちゃんはいつも唐突だ。
「なにを?」
「シゲおじさんがはじめて腕枕してくれた人なんだって。いいよねぇ、初腕枕。キスじゃなくて腕枕。なんか初々しくない?」
「別に」
「青年団の旅行だったんだって。夜、みんなが集まってる薄暗い部屋でコッソリ。修学旅行といっしょよね。男子が女子の部屋に忍び込んで。初恋よねぇ」
「もう修学旅行いったの」
「あのね、イサ。別にとか、もう修学旅行いったのかとか、そういうピント外れなこと言ってると女子にモテないぞ」
「じゃ、なんて言うのさ」
俺は口をとがらせた。
「子どもみたいにいじけないの。そうだねぇとか、いいねぇとか、合わせてあげるの女子に」
こうやって俺はいつもジュンちゃんにやりこめられる。いやじゃないけど、彼女にはしたくないタイプだ。
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