幻の少女

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幻の少女

幻の少女                      北川 聖        この世ならぬ荒れた学校だった。  傷害行為は当たり前のように野放しにされていた。骨折のような重傷を負っても事件として問題になることはなかった。誰もが見て見ぬ振りをして通り過ぎた。彼らの粗暴な行動は学校近くで揉め事になる事はあってもいつしかうやむやにされた。授業中に後ろの席でビールを飲んだりタバコを吸っていたりした。  先生と生徒の間には隔絶とした距離がありお互いに無関心だった。関わり合いになることを避けていた。女子生徒は当然の如く化粧を直していた。  山崎という一番の悪が短く折ったチョークの山を数学の山田という30代の教師に投げつけていた。教師は真っ白になりながら時々「痛い!」と短く叫んで淡々と授業を進めていた。 山崎が大声で教師の山田に言った。 「先生、微分積分は何の役に立つんですか?」
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