解放

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 高校生までのわたしは天才で、勉強も運動もできたから無敵だった。だから、人生って楽勝だなと思っていた。  幼稚園では女子一番人気のヒナコちゃんと毎日お砂場であそんで、男子一番人気のケントくんと毎日「けっこんのやくそく」をした。  小学校はヒナコちゃんと一緒だったから、ぜんぜん怖くなかった。ヒナコちゃんはかわいくて、お人形さんみたい。小学校でも当然「みんなのアイドル」だった。その「アイドル」にぴったりとくっつくわたしのことも、みんなはアイドル扱いしてくれた。  わたしは四歳年上の姉がいたから、幼稚園に通っている頃から児童書をながめていて、字の読み書きは誰よりも早かったし、地頭がいいのか、どの教科も授業を聞いているだけで百点が取れた。  小学校高学年くらいになると、足がすらっと長くなって(これはわたしのお気に入りのパーツの一つでもあるのだけど)、もともと速い方だった短距離のタイムがもっと縮んだ。  勉強ができたから先生によく褒められたし、運動ができたからクラスのみんなから頼りにされた。六年間すごく楽しかった。  卒業式では、クラスのみんなと別れるのが悲しすぎて、朝の会から泣いていた。式の最中もせっかく練習した歌が歌えなくなるくらい泣いたし、教室に戻ってからもずっと泣いていた。クラスのみんなのことが好きだったから、誰とも離れたくなかった。
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