◆出会い◆

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◆出会い◆

ぼくが初めてイヴと会ったのは、イヴが初出社したその日の朝だった。 漆黒の短い髪をワックスで少し尖らし、まだ10代の少年のように華奢な身体を髪と同じ色のパンツスーツで包んだイヴは、給湯室で珈琲を注いでデスクに戻ろうとしたぼくと目が合うと、うっすらと笑顔を作り、 「初めまして。本日からこちらで勤務することになるイヴです」 と名乗った。その声もやはり、10代の少年のような中性的な声で、ぼくは180あるぼくの身長より10cmほど低いところにある彼女の漆黒の瞳にしばらく見とれていた。 「私の上司になるカナタ氏ですよね?」 無言でイヴを見つめるぼくに、彼…いや彼女? この場合どう言えばいいのだろう。ともかくイヴがぼくに問いかけてきた。ぼくは慌てて 「はい、そうです。イヴ、ようこそ我が社へ。歓迎します」 と答え、珈琲カップを手近にあった台に乗せると右手を差し出した。その手を握りながらイヴは 「未熟者ですが、よろしくご指導お願いします」 と、またその中性的な声で答えてくれた。 イヴを社内に招き入れ、ぼくの隣のデスクに座るよう指示する。 目の前のデスクトップを起動させて、教えてもいないのに暗証番号を入力していくイヴ。それからUSBに端末を差し込み、今日からの仕事に必要だと思われるデータをパソコンにコピーし出した。 一連のイヴの行動を見ていて、改めて科学はついにここまで来たのか、と思った。
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