3.裏切り者の部下と対峙

22/23
8445人が本棚に入れています
本棚に追加
/1292ページ
 結局、新商品提案のミーティングどころではなくなってしまい、会議は中断。私は社長室に呼ばれ、吉峰チーフが事の経緯を説明した事に間違いが無いか再度問われた。何度も違うと説明したが、文也が杏璃の味方をしてしまった以上、また、私との交際を社の人間は知らなかったものだから、誰も私の言う事は信用してくれなかった。  今日は退社するように言われ、仕方なく開発部の自分のデスクに戻った。みんなの視線が痛く、私と視線が合うと目を逸らされた。  どうしてこんな事に・・・・。 「杏璃、少しだけいいかな? 話、したいの」  近くのデスクで仕事をしていた杏璃に声を掛けた。 「神尾先輩とお話しする事なんかありません。信頼していたのに、酷い裏切りです。とてもショックで・・・・」  杏璃が再び大きな目に涙を溜めた。  何でアンタが泣くのよ!  こっちが泣きたいよ。裏切ったのも、私をこんな酷い目に遭わせているのも、全部アンタじゃない――  一体どういうつもりなのか、みっともなく喚き散らし、泣き叫び、怒鳴って引っぱたいて暴れてやりたかった。  でも、そんな事をしても、誰も私の味方をしてはくれない。  これ以上声を荒げるとこちらが不利になる。仕方なく、もういいわ、と告げて、席に戻った。 「お先に失礼します」  深く頭を下げて、退社した。  裏切り者の部下との対峙は、結局私が悪者に仕立て上げられて終了した。
/1292ページ

最初のコメントを投稿しよう!