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プロローグ 悪夢
『ねぇ、カヲルちゃん。
いつか僕が大人になって、おじさんのお店を助ける事が出来るくらい立派なバリスタになれたら。
......カヲルちゃんは僕と、結婚してくれる?』
ぽっちゃりボディがチャームポイントな幼馴染みの嶋田 蒼汰が、はにかんだように微笑み聞いた。
しかし私は迷う事なく、きっぱりハッキリ告げた。
『ごめんね、蒼汰。
......私はね、格好良くて男らしい男の子が好きなの!
だから蒼汰とは、結婚しない』
大号泣する、蒼汰。
だけどそれにまた苛立ち、私は殺傷力抜群と思われるとどめの一言を発した。
『蒼汰のその泣き虫なところ、ホント大っ嫌い!
だからアンタが例え世界一のバリスタになったとしても、蒼汰とだけは絶対に無理!』
すると蒼汰は嫌な感じでニヤリと笑い、その瞬間彼の体からは無駄な贅肉がスルリと削げ落ちた。
そして身長がするすると伸び、あっという間にイケメン珈琲王子の姿へと変身した。
それから彼は私の事を小馬鹿にしたように嗤い、言ったのだ。
『珍しく、気が合うな。
俺もカヲルとだけは、絶対に無理だわ。
......さっきの言葉、忘れんなよ?』
***
「......なんて夢を、見るのよ。
よりにもよって、こんな日に!!」
ベッドからガバッと飛び起き、思わず大きな声で叫んだ。
目覚まし時計を確認すると、時刻は現在、朝の5時50分。
......7時まで寝てやろうと思っていたのに、すっかり目が覚めてしまった。
時計のアラーム機能をオフにして、忌々しい気分のままのそのそと立ち上がると、私は毎朝の日課であるラジオ体操を始めた。
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