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「はぁ、今日もご飯が美味しくて幸せだねぇ、センセー」
「それ、僕も思ってた」
「おお。だいぶ父娘らしくなってきたんじゃないのー私たち」
「うん。そうだね」
涼乃の代わりはいないし、生きている限り涼乃を失った哀しみが癒えることはない。
それでも、胸を張って言える。
僕は今、幸せだ。と。
*
「先生、いいじゃないですか。今回の新作! 亡くなった奥さんを想い続ける小説家と奥さんの忘れ形見である血の繋がらない娘とが、共に悲しみを分け合いながら支え合って暮らしていくなんて」
新作の原稿を読んだ担当の編集者である花井さんが涙目で言った。
自分ではよく書けたと思っていても編集者の反応が微妙な時もあるので、それなりに反応が良いとひとまず安心する。
「あのう、これってまさか、実話……じゃないですよね? 何て言うか、設定とかすごくリアルだし……」
探るように花井さんが訊いた。
「さあ、どうかな。それは読んだ方の想像にお任せするよ」
【終】
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