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朝、眩い光で目を覚ますと、小さな庭に出て洗濯物を干している涼乃の後ろ姿が二間続きの大きな窓から見えた。
太陽の強い陽射しを浴びて涼乃の白い肌は光って見えた。今にも透けてしまいそうなほど。空の青と庭の緑に、色白の涼乃がよく映えていた。
僕は横になったまま、しばらくその光景を眺めていた。
いつもと変わらないはずが、その朝は少し違っていた。
涼乃は陽気に鼻歌を歌い、時々シャツをバサバサと振りながら踊っていたのだ。
その姿が堪らなく可愛くて、自然と頬の筋肉が緩んでいた。
淑やかで奥ゆかしい人だと思っていた涼乃の知らない一面が見られた気がして、僕は胸の高鳴りを抑えることができなかった。
体を起こすと、抜き足差し足で縁側に向かい窓辺に立った。
彼女は僕の存在に気がつくことなく、その後もしばらく濡れた服と踊っていた。竿に引っ掛けられた洗濯物たちが風に揺れ、まるで一緒に踊っているかのようだった。ミュージカルの一場面を観ているような、愉快な高揚感に包まれる。
バスタオルを手にした涼乃がくるりとターンした。その時、僕と目が合った。
「きゃっ。せんせ、起きてたんですか」
ひどく驚いた様子で、彼女は持っていたタオルで顔を覆った。
「うん。おはよう。朝から楽しそうだね」
「まだ寝てると思ってたから。起きたのなら声かけてくれればよかったのに。黙って見てるなんてイジワルですね、せんせは」
顔を真っ赤にして、涼乃は残りの洗濯物を慌てて干していた。
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