妹の立場

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お姉ちゃんは県外の大学に進学を決めて、お父さんと喧嘩して家を出て行った。 全部、内緒で準備していたらしくてお母さんは勿論、お父さんも知らなかったんだって。私も知らなかった。 出て行く日、両親は家にいなくて、春休み中で友人と遊ぶ約束をしていたけど、なんとなく予感がしてキャンセルして部屋にいた。 段ボールの箱を数個、宅配業者に渡して、部屋から鞄を手に出て来た。 「お姉ちゃん?新しい住所教えて?大学どこ?」 「内緒。勉強の邪魔されたくないし、いろいろね?忙しくなるし。」 「忙しいなら手伝いに行くよ?」 「さゆが?沙由香は自分の事、大変でしょ?塩田くんと別れたって聞いたよ。勉強頑張ってね。沙由香は沙由香の人生を生きて行くんだから。」 (沙由香の人生?そんなの当たり前じゃない。沙由香の人生は沙由香の物なんだから…変なお姉ちゃん。) そんな風に思ったのを覚えてる。 アパートや大学の保証人になったのが父の母親、祖母の絹沢(きぬさわ)治子(はるこ)だと父親が騒いで電話をしていた。 結局、高齢とは言え、母親には勝てないのか、もういい!の一言で父親はその件から手を引いた。 (一人暮らしかぁ…面倒そう。ご飯もお掃除も自分でするんでしょ?お金は?どうせおばあちゃんかパパが出してるんでしょ?たまにお泊まりしに行きたいなぁ。) そんな風に考えたけど、おばあちゃんに聞いてもお姉ちゃんの住所は教えてくれなかった。 大学も知る必要はないって言われた。 昔からおばあちゃんは苦手。 (おばあちゃん、さゆの事嫌いだもんね。) お父さんの携帯に会社の昼休みに時々、元気にしてると電話があるって聞いただけ……。 (家に掛けてくればいいのに、なんでパパだけ?) その時はそう思った。 大学に入る時に分かった。 お姉ちゃんとさゆはお母さんが違う人だった。 お姉ちゃんが一歳の時に家を出て行ったらしい。 娘を置いて出ていける母親、お姉ちゃんが可哀想だなってお母さんの子供で良かったって思ったんだ。 お姉ちゃんは可哀想だから側にいてあげないとね?
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