1.結婚願望

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「悪い、遅くなった」  私の妄想を邪魔するように、黒縁眼鏡の西條(さいじょう)先輩がこちらへ走り寄ってきたので、私は仕方なくそちらへ顔を向ける。 「遅いですよ叶多さん。食事会もう終わっちゃいましたよ」  文句を言うと、彼は申し訳なさそうに眉根を下げた。 「ごめんな。急ぎの仕事が入ってさ。──で、どうだった? あいつ、深瀬の好みだっただろ?」 「えっと、まあ……そうですね」  やっぱり、男の人から見る“イイ男”は違うのだろうか。  一馬さんはどちらかというと、同性からの方が人気がありそう。 「背も高いしイケメンだし、俺のイチオシの物件なんだ」 「物件て。でも確かに、素敵な人でした」  私は素直に感想を口にする。  少し強引で胡散臭いところはあったけど、じゅうぶん恋愛の対象になり得る。 「久しぶりにあいつと会ったら、彼女いないって言っててさ。向こうも深瀬みたいな芋っぽい子が好きみたいだから、これはチャンスだ!って思ったんだよな」 「イモって……失礼ですよ」  私は口を尖らせ、得意気に語る叶多さんを睨む。
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